WOWOWの連続ドラマW「セイレーンの懺悔」の1話から最終回、最終話・結末のあらすじやネタバレ、キャスト情報や視聴率、動画配信や感想について紹介していきたいと思います。
このドラマ「セイレーンの懺悔」はどんでん返しの帝王と言われている中山七里さんの作品で、ドラマ化不可能な、メディアへ喧嘩を売っているような作品と言われてきました。
しかし、そんな作品がWOWOWでドラマ化されます。
報道の闇を切り取ったドラマ「セイレーンの懺悔」について紹介していきたいと思います。
目次
連続ドラマW「セイレーンの懺悔」のネタバレ一覧
ここから、記事を全て読んでいただくのも嬉しい限りですが、記事が何分長いので、気になるところにジャンプ出来るように、それぞれのネタバレなどを項目ごとに用意しました!
気になる箇所をクリックしてみてくださいませ!
連続ドラマW「セイレーンの懺悔」の基本情報
2020年でデビュー10周年を迎えた作家・中山七里。
“どんでん返しの帝王”の異名を持ち、これまでに数々の作品が映像化されて来た中山七里の作品の中でも“ドラマ化不可能”と言われた作品が存在する。
それが、「セイレーンの懺悔」です。
テレビ局を舞台にしたこの小説は「報道」のタブーに切り込んだ衝撃作として、刊行当時から大きな話題を呼んでいた。
そんな本作が、満を持してWOWOWで連続ドラマ化されることが決定しました!
果たして、マスコミはセイレーン(ギリシャ神話に登場する半人半鳥の妖精)のように国民を惑わし、人の不幸を娯楽にする怪物なのか?
報道の自由や意義について問われることが多い今だからこそ、WOWOWがその在り方に真っ向から切り込む衝撃の報道サスペンスドラマにご期待いただきたい。
【原作】
中山七里「セイレーンの懺悔」(小学館文庫)
【脚本】
篠﨑絵里子(「連続ドラマW 坂の途中の家」、「グッドワイフ」)
【監督】
中前勇児(「連続ドラマW トップリーグ」、「義母と娘のブルース」)
村上正典(WOWOW×東海テレビ共同製作連続ドラマ「ミラー・ツインズ」シリーズ、「連続ドラマW 真犯人」)
【音楽】
富貴晴美(「西郷どん」、『関ヶ原』)
【チーフプロデューサー】
青木泰憲
【プロデューサー】
高江洲義貴 浦井孝行 杉本明千世
連続ドラマW「セイレーンの懺悔」のキャスト
朝倉多香美 演:新木優子
報道番組の新人記者。あるつらい過去を抱え報道記者という職を選んだ。
番組が不祥事続きで窮地に立たされていながらも、誇りを持って仕事に取り組んでいた。
そんな中、女子高生誘拐殺人事件が発生。
事件を追う多香美は、番組の名誉挽回のためにスクープを狙いながら、自身の過去と向き合っていくことに・・・。
そして、事件の真相が明らかになった時、報道記者としての在り方が問われる。
里谷太一 演:池内博之
帝都テレビの報道番組「アフタヌーンJAPAN」の報道記者で多香美の先輩。
三島奈那子 演:高梨臨
帝都テレビのライバル局であるジャパンテレビの報道記者。
東良伸弘 演:甲本雅裕
事件の被害者・東良綾香の父。
東良律子 演:濱田マリ
事件の被害者・東良綾香の母。
兵頭邦彦 演:池田成志
「アフタヌーンJAPAN」の編集長。
宮藤賢次 演:高嶋政伸
女子高生誘拐殺人事件を追う警視庁捜査一課の刑事。
連続ドラマW「セイレーンの懺悔」のあらすじ・ネタバレ
不祥事が続き、番組存続の危機にさらされた帝都テレビの看板報道番組「アフタヌーンJAPAN」。
その制作に携わる入社二年目の報道記者・朝倉多香美(新木優子)は、あるつらい過去を抱えながらも報道の仕事に誇りをもって取り組んでいた。
そんな中、都内で女子高生誘拐事件が発生。
先輩記者の里谷太一(池内博之)と多香美は、起死回生のためにスクープを狙って事件を追う。
警視庁捜査一課の刑事・宮藤賢次(高嶋政伸)を尾行した多香美が廃工場で目撃したのは、無惨にも顔を焼かれた被害者・東良綾香の遺体だった。
自身の過去と重なりこの事件を追っていた多香美だが、その執念が実を結び、犯人に繋がる大きなスクープをものにする。
しかし、このスクープが原因となり、ある事件が起きてしまう・・・。
果たして、事件の真犯人は誰なのか?
そして、報道記者としての “正義”とは?
連続ドラマW「セイレーンの懺悔」1話のあらすじ・ネタバレ
帝都テレビの看板報道番組の報道記者・朝倉多香美(新木優子)は、あるつらい過去を抱えながらも仕事に誇りをもって取り組んでいた。
そんな中、女子高生誘拐事件が発生。
先輩記者・里谷太一(池内博之)と多香美は、スクープを狙い警視庁捜査一課の刑事・宮藤賢次(高嶋政伸)を尾行。
無残にも顔を焼かれた被害者の遺体を目撃する。
やがて多香美は犯人につながる大きなスクープをものにするのだが、これが原因である事件が起きる。
連続ドラマW「セイレーンの懺悔」2話のあらすじ・ネタバレ
誘拐殺人事件の重要参考人として多香美らが報じた女子高生・仲田未空が自殺を図った。
マスコミに追われる未空の家族。
「これがあなたのニュースの結果」とライバル局の報道記者・三島奈那子(高梨臨)に言われ、苦悩する多香美。
そんな中、里谷は無心に取材をする多香美に私情を挟まれたら迷惑だからこの事件から降りろと言い放つ。
一方、事件を追う宮藤は多香美のことが気になり彼女の過去を調べていた。
連続ドラマW「セイレーンの懺悔」3話のあらすじ・ネタバレ
警察が緊急記者発表を行なう一報が入る。
犯人逮捕が近いと読んだ多香美は赤城昭平(嘉島陸)を尾行。
しかし、尾行に気が付いた赤城は「お前らは最初っから間違ってる」と迫る。
事件の真相が明らかになっていく中、多香美はつらい過去が世間にさらされマスコミに追われる立場に・・・。
一方、不穏な動きをする編集長・兵頭邦彦(池田成志)に違和感を覚える里谷。
そして、気掛かりが残る宮藤は事件現場に足を運びあるものを発見する。
連続ドラマW「セイレーンの懺悔」4話最終回のあらすじ・ネタバレ
誤報の責任を負わされ関連会社へ出向を命じられる多香美。
報道記者として失格だと失望するが「誰も当てにするな。お前の事件だ」そう里谷に言われ、決意を固める。
そんな中、犯人が逮捕され、奈那子の独占取材を受ける被害者の父・東良伸弘(甲本雅裕)は無念の想いを語る。
一方、事件はまだ終わっていないと考える宮藤は、多香美に自分の目で真実を確かめるべきだと告げ・・・。
果たして事件の真相は?
報道記者としての正義とは?
原作「セイレーンの懺悔」のネタバレ
多香美(新木優子)たちが手に入れた大スクープによって、報道番組「アフタヌーンJAPAN」の視聴率はうなぎのぼり!
一件落着かと思われたそのとき・・・。
大スクープは、大誤報だった。
警察が逮捕したのは、多香美たちがまったくマークしていなかった別の犯人グループ。
「アフタヌーンJAPAN」は事件とはまったく無関係の少年少女たちを、モザイクありとはいえ犯人であるかのように報じてしまっていただった。
それにより、世間からの非難、視聴率の低下、局からの懲戒処分・・・。
誰もが顔を青くしましたが、本当の問題は別のところにある。
多香美の頭に真っ先に浮かんだのは、それまで主犯だと思い込んでいた少女・仲田未空(メドウズ舞良)のこと。
性犯罪の被害に遭うという辛い過去を持つその少女は、つい先日、手首を切って病院に運ばれたばかり。
もし未空が犯人だったのなら、厳しいながらも自業自得だといえたかもしれない。
しかし、未空は事件とは無関係だった。
まったく関係のない事件の犯人だと報道され、連日マスコミ各社から厳しい言葉を投げつけられ、精神的に追い詰められて・・・。
「被害者の無念を晴らしたい」
「二度と同じような事件を起こさないために」
多香美が信じた正義は、実際にはただの理不尽な暴力でしかなかった。
いったいどうしてこんな誤報が起こってしまったのか・・・。
東良綾香(山田佳奈実)はいじめられていて、仲田未空はいじめの主犯格だった。
未空は不良グループの一員であり、美人局で小遣いを稼ぐような悪事にも手を染めていたし、犯行時刻のアリバイもなかった。
そして極めつけは、クラスメイトである生方静留(原田えりか)の証言。
事件当日、未空はしつこく綾香につきまとっていた。
綾香は未空たちに取り囲まれて校門を出ていた。
状況証拠としては十分で、なるほど確かに未空が犯人であるように思われる。
けれど、もしも情報が意図的につかまされた嘘だったとしたら?
結論からいえば、生方静留の証言は真っ赤な嘘だった。
事件当日、綾香と未空が一緒に校門を出たという事実はなかった。
では、なぜ静留は報道関係者に偽の情報を流したのか・・・?
その理由は・・・。
「何故、俺たちにガセネタを掴ませた。」
「いまさら君の責任を問うつもりはない。だが言え。」
「仲田未空に恨みでもあったのか」
「悪いのは未空よ。あいつが彼にちょっかい出したりするからこうなるんだ」
「彼?何だそれは」
「同じクラスの冴木道久くん。最近、未空が道久くんに色目を使い始めて・・・」
静留と付き合っていた冴木道久なる男子が最近、よそよそしくなった。
原因は未空が話しかけたのをきっかけに二人の仲が急接近したからだという。
「それで、未空が警察沙汰に巻き込まれれば道久くんの目が覚めると思って・・・どうせ元から未空は不良だったし」
多香美は堪えきれず声を出した。
「あなた、そんなことのために嘘を吐いたの?」
報道は社会全体に大きな影響を与える。
大きな力には相応の責任がともなうわけで、たとえば偽情報に踊らされないようにしっかり裏づけをとることは義務だといってもいいでしょう。
今回の誤報は、一発逆転に目がくらんで裏づけを怠った多香美たちの落ち度。
警察や司法にとっての冤罪がそうであるように、報道にも他人の人生を狂わせるだけの暴力性があり、だからこそ絶対に誤報だけは起こしてはいけないという自覚が多香美には不足していた。
東良綾香を殺害したのは、LINEでつながっていたつき合いの浅い友達グループだった。
織川涼菜
櫛谷友祐
坂野拓海
杉浦剛大
このうち涼菜だけが綾香の友だちで、櫛谷はその彼氏。
坂野と杉浦は櫛谷の先輩という関係性。
では、いったいなぜ彼らは綾香の命を奪ったのか・・・。
きっかけは「(櫛谷友祐は)キモい」という綾香のなにげない発言だった。
彼氏を悪く言われて腹が立った涼菜が他のメンバーに声をかけて、綾香をリンチしたということだった。
もちろん涼菜たちに殺意はなかった。
殴る蹴るの暴力を振るっても、武器を用意していなかったのがその証拠。
ただ、集団心理とは恐ろしいもので、暴力に身を任せているとどんどんエスカレートしてしまい、ブレーキが踏めなくなってしまう。
「自分たちは不当な評価を受けている」
という日常の不満(ストレス)も暴力を加速させ、結果としてやりすぎてしまったということだった。
大誤報への罰として、「アフタヌーンJAPAN」にはスタッフ総入れ替えという処分が下された。
ディレクター・兵頭邦彦(池田成志)はADに降格。
里谷(池内博之)はバラエティ番組専門の関連会社(下請けの制作会社)に島流し。
厳しい処分が下されるなか、しかし多香美だけはお咎めなしで、そのまま番組に残れることになった。
というのは、里谷が庇ってくれたから。
目先の欲に目がくらんでいたディレクターとは違って、里谷は最初から誤報の危険性を考慮して慎重になるべきだと主張していた。
しかし、いくら社会部のエースといっても、上司の決定には逆らえない。
そこで里谷は誤報の責任がすべて自分にあるように見せかけ、いざというときに多香美を守れるようにしていた。
多香美は自分よりも里谷が残るべきだと元ディレクターの兵頭に訴えるが・・・。
「里谷さんがわたしを庇った理由が理解できません。」
「誰がどう考えたって、里谷さんが報道局に残留すべきでした」
「そういう人間だから、責任を問われる場合には一番先に目をつけられる。」
「たらればの話になるが、お前を庇わなくても、あいつは処罰の対象にされたさ。」
「社会部のエースを人身御供に差し出さなきゃ、とてもじゃないが示しがつかんからな。」
「お前を残そうとしたのは、あくまであいつの我がままだ」
「我がままって・・・それだけの理由でわたしはお咎めなしにされたんですか」
「去りゆく人間の、最後の我がままだからな。聞かずにはおれん」
こうして多香美はひとり「アフタヌーンJAPAN」に残された。
これまでずっと里谷にくっついていただけなので、これからなにをすればいいのか右も左もわからない。
けれど、多香美にはやるべきことがある。
去っていった里谷の最後の言葉が、多香美の背中を力強く押していた。
里谷が言う。
「絶対に手を抜くなよ」
多香美が返す。
「もう・・・教えてくれる人がいません」
里谷が言う。
「必要なことはもう充分学んだはずだ。後は忘れなければいい」
・・・しかし、本当に事件は終わったのだろうか?
いまだに捜査を続けているらしい宮藤刑事(高嶋政伸)の姿に、多香美はふと疑問を抱く。
綾香の死因は首を絞められたことによる窒息で、その遺体は廃工場に放置されていた希硫酸で焼かれていた。
いくら集団心理が働いたといっても、「キモい」というたった一言からそこまで凄惨な事件に発展するものなのか?
犯人側の弁護士にアプローチしてみると、涼菜たち犯人グループは暴行の事実を認めている一方で、
「首を絞めてはいない」
「顔の焼けただれにも覚えはない」
このように供述していると言う。
涼菜に呼び出された綾香は廃工場へ出向き、櫛谷たち四人から殴る蹴るの暴行を受けた。
ぐったりした綾香に満足した犯人グループは廃工場を去る。
後になって不安になった犯人グループは綾香の様子を確認するため、廃工場に戻るのですが、そのときにはもう綾香は亡くなっていた。
慌てた犯人グループは東良家に身代金を要求する電話をかけて誘拐事件のように見せかけ、解散。
最後には監視カメラの映像や現場に落ちていた毛髪などが決め手となり、逮捕された。
この時系列からわかるのは、誰も綾香がこと切れた瞬間を目撃していないということだった。
一見、綾香はリンチによって衰弱して時間差で亡くなったように思われるが、あくまで死因は窒息。
犯人グループの供述を信じるなら、涼菜たちが廃工場から離れていた空白の時間に、別の何者かが綾香の首を絞め、その顔を焼いたということになる。
多香美はさらに事件の真相を探り、『ある人物』にこれまで見えていなかった別の側面があることに気づく。
夜、人目を忍ぶようにして事件現場(廃工場)に出向き、なにやら探している様子の『ある人物』
明らかに不自然な行動だ。
多香美は『ある人物』を追って、廃工場に乗り込むのだが・・・。
『ある人物』は多香美の尾行に気づいていた。
まんまと人気のない廃工場までついていってしまった多香美は、殴り倒されて拘束されてしまう。
「不思議だよなあ。今からあんたを殺そうとしているのに、自分でも驚くくらい落ち着いているんだ。」
「きっとあんたが二人目だからだろうな。」
「綾香の時には慌てふためいて、ろくすっぽ生死も確かめないままに飛び出しちまった」
男はやはり事件の真犯人だった。
しかし、大スクープを耳にした多香美は、今まさに二人目の犠牲者になろうとしている。
「もうダメだ・・・」
多香美が諦めかけた、そのときだった。
「東良伸弘(甲本雅裕)、殺人未遂の現行犯で逮捕する」
宮藤刑事が駆けつけてくれたおかげで、多香美は間一髪、命を拾ったのだった。
事件の真犯人は、被害者の父親だった。
といっても、血のつながりはなく、綾香にとっては「母親の再婚相手」にあたる人物。
物語中盤までは「娘を亡くした父親」として違和感なくふるまっていた伸弘だったが、その実態はかなりのダメ男だった。
ろくに働かず、パチンコ屋に入り浸る。
プライドだけは高い。
そんなどうしようもない男だから、多感な時期の綾香が好感を抱くわけがない。
そして、事件当日の七月二十三日。
綾香がLINE上で織川涼菜と会話している最中、涼菜が付き合っていた櫛谷友祐について不用意な発言をする。
それに憤慨した涼菜が友祐に告げ口し、友祐は先輩の杉浦剛大と坂野拓海を巻き込み、やがて綾香は四人の待つ廃工場に呼び出される。
綾香への暴行が始まり、集団心理と日頃のストレスが相乗効果となって四人の行為は暴走する。
綾香はぐったりとして動かなくなる。
この時点で四人は綾香がただ意識を失っただけだと思い込んでいた。
宮藤は言う。
「その時点で綾香は死んでいなかった。意識を取り戻した綾香は自宅に助けを呼んだ。」
「だが母親はまだ仕事から帰っておらず、自宅の固定電話に出たのは伸弘だった。」
「SOSを聞いて伸弘は廃工場に駆けつけ、綾香を介抱しようとする。」
「だが信じていたLINEの友人から手痛い裏切りに遭って傷ついた綾香はキレて、伸弘を罵倒し始める」
「ひどく汚い言葉で罵ったそうですね」
「彼女はこう言ったそうだ。あんたなんか本当は呼びたくなかった。」
「父親面しているけど、お母さんの収入に頼って生きているただの寄生虫じゃないかってな。」
「他にもDQN(ドキュン)やらゴミクズやら本人には耳の痛い言葉を吐いたらしい。」
「日頃から劣等感を抱いていた人間が聞けば容易に逆上してしまう言葉だったんだろうな」
そして怒りに我を忘れた伸弘が発作的に綾香を絞殺する。
「綾香は薬品入りのプレートに顔を突っ込む。」
「その際、伸弘はジャージを着ていたんだが、このジャージのポケットに入っていたパチンコ玉が弾みで現場に転げ落ちた。」
「だが伸弘はそれに気づかず、そのまま現場を立ち去った。」
「そこに杉浦たちが入れ替わりの形で戻ってくる。」
「自分たちのしたことに急に不安を覚えたからだが、なんと綾香は死体となっていた。」
「恐怖に駆られた四人は自分たちの犯行を晦ますためにその場で偽装誘拐を思いつき、綾香の自宅に電話をかけた・・・と、これが一連の流れだ」
伸弘が廃工場に戻ってきたのは、落としたパチンコ玉を探すためだった。
しかし、パチンコ玉は警察に回収されていて、指紋つきのそれの存在によって警察は(涼菜たちを逮捕した裏で)伸弘のことをマークしていた。
綾香の命を奪った犯人は伸弘。
これは揺るぎない事実であり、警察の捜査もここで終わる。
しかし、物語にはさらなるラストが待ち構えていた。
原作「セイレーンの懺悔」の結末
いったい何がそこまで綾香を追い詰めたのか・・・。
宮藤が多香美に説明した事件の一部始終ですが、実はひとつだけ重要なピースが抜けていた。
宮藤は言う。
「杉浦たちがいったん立ち去った午後九時から最後の電話までの約二十分間、綾香さんは何度も何度も同じケータイに電話をかけています。」
「その数、実に二十四回。この事実が示しているのは、つまりこういうことです。」
「綾香さんは意識を取り戻してから同一人物に何度も助けを求めていた。」
「二十分間、連続二十四回。しかし、その相手は遂に一度も電話に出ることがなかった。」
「それでやむなく綾香さんは自宅の固定電話に連絡先を変更したんです。」
「ところが電話に出たのは伸弘氏で、綾香さんの求めていた人物ではなかった。」
「だから救出に来てくれても綾香さんは絶望したのです。」
「助けてほしかったのは別の人物で伸弘氏ではなかった。」
「綾香さんが伸弘氏を口汚く罵ったのは、助けを求めた人物に裏切られたと思ったからです」
「いいや。当日、あなたは九時ちょうどに仕事を終えてタイムカードを押している。」
「私服に着替えて帰宅準備をする間、あなたには電話に出る時間が十分にあった。」
「でも、あなたはあえてそれを無視した。それが結果的に綾香さんの首を絞めることになったんです」
宮藤のセリフに登場する“あなた”。
もし、その人物が電話に出ていれば、綾香はまだ生きていたかもしれない・・・。
つまり、本質的に綾香にとどめを刺したのは、電話を無視したその人物であるともいえる。
その人物の正体は・・・
「綾香さんが求め、何回も連絡を取ろうとした人物は律子さん、あなたでした」
東良律子(濱田マリ)は、東良綾香の母親。
たったひとりの味方だと信じた実の母親に裏切られたからこそ、綾香は深く深く絶望した。
ここから律子は「どうして電話を無視したのか?」という理由について語りだす。
「東良(伸弘)に生活能力がなかったために、わたし(律子)は昼も夜も働き通しでした」
「朝七時半に家を出て、夕方五時までスーパーで働き、いったん家に戻って家族の夕飯をこしらえてからハンバーガー・ショップのパート。」
「帰ってくるのはいつも午後十時。そんな生活を二年近くも続けていれば、いい加減嫌にもなります」
「仕事で疲れることと綾香さんからの着信を拒否することと、何か関係があるんですか」
「高校に入学してから、ずっと綾香は問題児でした。クラスでいじめられるたびに早退してきて、部屋にこもるし、勉強せずにスマホばっかりいじるようになるし、わたしとさえ会話しなくなるし、担任の先生からは出席日数が足りないと小言を言われるようになるし・・・くたくたに疲れて帰ってきた身に、そういう話はなにより堪えるんですよ」
「は、母親じゃないですか」
「あなたは母親になったことがあるの?」
律子は多香美をからかうかのように訊く。
「学校で問題を起こし、家の中ではろくに口も利かなくなり、何を考えているのか全然わからなくなった娘を抱えながら、日がな一日働かされる母親の気持ちがわかるっていうの?」
「相談したくても、愚痴をこぼしたくても、五歳児のたわごとみたいな話を繰り返す亭主には何を言っても通じない。」
「そんな女房の気持ちがわかるっていうの?」
「一日の仕事が終わって家に帰る途中、娘から着信が入る。」
「どうせろくな用じゃない。わたしがそう思うのは、そんなに責められることなんですか」
「刑事さん」
「はい」
「わたしがあの娘からの電話に出なかったことは、何か罪に問われるのでしょうか」
「罪に問われるかどうかはともかく、あなたを裁く条文はありませんね」
「それなら安心しました」
宮藤が認めたように、律子が法的に裁かれることはない。
しかし、司法が沈黙せざるを得ないとしても、報道にはやれることがある。
多香美は名前を伏せた上で、綾香が最後に“とても親しい人物”に何度もSOSを送っていたことを電波に乗せた。
他ならぬ多香美自身が犯人(伸弘)から襲われた被害者ということもあり、「アフタヌーンJAPAN」の視聴率はぐんぐん伸びていく。
しかし、多香美の顔に喜びの色はない。
視聴率を追いかけた挙句の大誤報だった。
多香美は生放送で、上司には無断で報道番組のタブーとされる「誤報の謝罪」を口にする。
「同じ過ちを繰り返さないために、誤った報道は直ちに訂正され、誤報した者は直ちに謝罪すべきです。」
「またどこかで間違うかもしれません。」
「でもその度に頭を垂れて初めからやり直します。」
「視聴者の皆様から退場を命じられるまで、わたしは立場の弱い人々の声を拾っていきたいと思っています」
船乗りたちを歌声で惑わせる怪物・セイレーン。
人々に大きな影響を与える報道はまさにセイレーンの歌声であり、その力の使い方を間違ってはいけない。
ジャーナリストとしての多香美の成長を感じさせるその力強い宣言は、報道番組≒セイレーンが初めて表明する懺悔でもあった。
言い終わって頭を一つ下げると、期せずしてスタッフの中から拍手が起きた。
とうとう言ってしまった。
後悔と、それをわずかに上回る爽快感がないまぜになっている。
見慣れた男が腕組みをしたまま、中継車にもたれかかっている。
「宮藤さん」
仏頂面の刑事は片手を挙げて応えた。
「どうしたんですか、こんなところに」
「刑事に尾行や張り込みはつきものだ」
いきなり何を言い出すのかと思った。
「対象者から身を隠すのに一番好都合なのはクルマの中か道路側に窓のある喫茶店だ。「
」だから喫茶店の位置はすぐに把握するようになる」
「何のことです」
「この辺一帯は尾行で何度も通っている」
「だから、いったい何のつもりなんですか」
宮藤は口をへの字に曲げた。
「近くに美味いコーヒーを飲ませる店がある。今から付き合わないか」
連続ドラマW「セイレーンの懺悔」キャスト・スタッフのコメント一覧
新木優子のコメント
本格的なサスペンスへの挑戦、さらに、初めての記者役ということで最初は不安もありましたが・・・原作・脚本を読み、真実が180度覆されてしまうような衝撃を受け、あまりの面白さにすぐに作品のファンになってしまったので、参加することが出来て嬉しいです。
私が演じる多香美は正義感が強く、自分では抱えきれないようなつらい過去を持っていながらも、強い想いを胸に真実を追い求める姿が印象的です。
報道番組の仲間や周りの人々が彼女の想いに突き動かされていったように、自分で何かを変えようと動く力が素晴らしいと思いました。
私自身も多香美の強い想いを大切にしながら演じていきたいです。
でも、まだ入社2年目の新人で、一つのことに集中してしまうと周りが見えなくなる危うさも持ち合わせているので、その不安定な脆さも表現したいです。
今まで演じたことのない役に挑むので、視聴者の皆様には新しい私をお見せ出来ると思いますし、多香美が記者として成長するとともに、私も作品を通じて成長していけることが楽しみです。
多香美が自分の信念を胸に真実を追い続けたように、激動のこの時代は自分の気持ちを明確にする、そして、その想いに従って生きることが大切ではないかと感じました。
この作品が皆様にとっての想いを見つける “ヒント”になれば幸いです。
池内博之のコメント
作品を読むとグイグイと世界に引っ張られ、あっという間に読んでしまいました社会派サスペンス。
マスコミの裏側が描かれていて、誤報や報道の怖さを改めて感じました。
主人公のような自分の信念を持った人間がいて欲しいとも思いました。
そして、やはり驚いたのがラスト。
いい意味で本当に裏切られ、やられた感がありました。
報道記者である里谷を演じるにあたり、自分に信念をもちどこかハイエナのような嗅覚をもちあわせ、強さと優しさを持ち合わせた熱い男を演じたいと思います。
衝撃のエンディングをお楽しみに!!
高梨臨のコメント
台本を読んで、本格的なサスペンスのストーリーの面白さや、そこに絡んでいく記者、そして事件の当事者達の複雑な感情や背景が描かれていて、夢中で読み終えました。
私自身、記者として現場リポートをしていく役をいただくのは初めてなので、とても楽しみです。
今回演じさせていただく三島奈那子は、記者としてのプライドが高く、仕事に命をかけてきた女性です。
カッコよくも、仕事の為ならどこまでも突き進んでいきそうな、強い女性を演じていけたらと思っております。
甲本雅裕のコメント
自粛期間中ほぼテレビを観る人になっていて、はたしてつくる側に戻れるのかと心配していましたが、案外すっと戻れている事に驚いています。
以前と比べ制限される事は沢山ありますが、このドラマは自分にちゃんと制限をかけられるか、それとも突き進むのかを問う作品だと思います。
役の上では葛藤しながらも、待望のWOWOWドラマへの参加。
制限かける事なく突き進みます!
監督に制限かけられない限り・・・笑
濱田マリのコメント
私が演じている被害者の母親・東良律子は、小さな幸せを探して健気に生きているけれど、思い通りにならない日々の生活の中で、怒りとも悲しみともつかない感情が静かに沈殿しているような女性。
それをどう表現するのかが課題でした。
撮影は刺激的で、感覚が研ぎ澄まされる瞬間が何度もありました。
原作の小説、脚本を読んだ時に私自身が受けた衝撃を、このドラマを見る皆さんにも是非感じていただきたいです。
池田成志のコメント
台本を読んで、報道の多面性もさることながら、事実の多面性ということを強く感じました。
見る角度によって物事は違って見える、つまり、人によっても違うとでも言いましょうか。
そのことが丹念に描かれてるなぁと感じました。
私の演じる兵藤は、興味を煽ることによって、視聴率を上げることに奔走する、今的な底の浅そうな人間ですが、彼の様な人間がいることも現実的です。
そんな彼がストーリーを通して何か変わるのか?
変わらないのか?自分でも楽しみです。
高嶋政伸のコメント
まず、奇妙な題名に惹かれました。
次に、台本を読ませて頂いて、その深い内容、その面白さ、そして読み終わった後の圧倒的な感動に驚きました。
気がつくと、宮藤を演じさせて下さいと会社に連絡していました。
宮藤、という刑事の面白いところは、事件を俯瞰して見ているところ。
決して、探偵の様に飛躍させず、徹底的に動機にこだわるところが、リアルだと思います。
また、この作品の見どころは、普段の日常に潜む人間の闇を勧善懲悪を超えた視点で描いているところだと思います。
誰もが、闇と闇が重なった闇溜まりを持っていて、ふとした瞬間にそれが一気に吹き出し、日常を非日常へと逆転させる。
この作品は、ギリシャ神話の妖精セイレーンを現代によみがえらせ、そんな日常にひそむ「闇溜まり」を我々に突きつけ、瞬きもせずにジッと見据えています。
原作・中山七里のコメント
僕は生来アマノジャクなところがあり、映像化がまず不可能な小説を書いてしまう。
海外を舞台にしたりタブーとされているテーマを扱ったりするのはそういう理由だ。
『セイレーンの懺悔』も例に洩れず、連載当初から「中山さん、テレビ局に喧嘩売ってるんですか」とか、「もう清々しいくらいにドラマ化は無理ですね」とか散々言われていたのだ。
ところがやはり連載当初から「これはウチのために書かれたような作品ですね」と熱烈にドラマ化のオファーをいただいた局があった。
言わずと知れたWOWOWさんである(この経緯、実は単行本の帯にこっそり記載がある)。
モノ作りには決めごとの中でベストを発揮する面白さもあれば、タブーをぶち破る面白さもある。
『セイレーンの懺悔』ドラマ化は間違いなく後者である。
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